「コンピューターと脳は違う」——ヒトの脳が苦手なのは○○○〇こと!」
🍊前回に引き続き、単語の学習についてお話ししたく存じます。英語を深く考え続ける磯野でございます。
🍊単語学習といえば、真っ先に浮かぶのは単語帳だと思います。中でも英単語と和訳だけの情報にスリム化された単語帳は安定した人気を誇ります。また、暗記の途中で1つの単語に2つ以上の訳が振られていると嫌な気持ちになる、という記憶は誰しもお持ちではないでしょうか。これらのことからは「情報は少ない方が覚えやすい」という世界観が窺えます。今日すっかり定着したコンピューターからのメタファー(無意識に似たものと対応させることを概念メタファーと呼びます。)は、「情報量=負荷」という図式をさらに強めているようです。しかし、本当でしょうか。
🍊「覚えているのに思い出せない!」「言われてみればそうだった!」というご経験、ありますよね。これはコンピューターでは起こりえないことです。記憶容量にある情報とその位置が正しく指定されれば、コンピューターはすぐに情報を取り出すことができます。また、削除した(=忘れた)情報を聞いたからといって思い出すことはありません。逆にヒトの脳は覚えておくこと自体は得意ですが、それを検索して再生する、つまり「思い出す」ことが苦手だそうです。コンピューターとヒトの脳では記憶の特性が大きく異なるということですね。
🍊この観点に立つと、覚えたのに思い出せない単語を思い出せる単語にする、ということが単語学習の真の目的です。単語の復習に必要なのは「覚えなおし」ではなく「思い出せる形に知識を変形すること」です!
🍊たとえば、新しい地名を言われてすぐに覚える(=思い出せる知識にする)ことは難しいです。一方でその土地に旅行に行くと同じ地名でもすぐに頭に浮かぶようになります。景色や、音、歩いたり泳いだりした体の感覚、名物料理の匂いといった情報が地名に貼りつくからです。極端な言い方をするとヒトの脳にとっては「情報が増えれば増えるほど覚えやすい」ということになります。
🍊単語についても同じ作戦を採ることができます。付け加える情報はどんなものでも構いません。手始めに「良い意味/悪い意味/どちらでもない意味」の単語に区別してみることが磯野的おススメです。その他「長い」「強そう」「読みにくい」等々、客観的・主観的なイメージを単語に染み付けていくとさらに効果が高まります。辞書を引いてあえて和訳を増やすこともひとつの作戦です。派生語と結びつけるのも有効です。つづりに極端な特徴がある単語に限っては書いてみることにも効果が見込めます。果ては「この単語を覚えた日の晩御飯はからあげだった」などという記憶であっても、思い出すために使えるならば有益です。長文の中で単語を覚えるという方法に長い歴史があるのもこのためです。 🍊「単語帳が唯一最高の手段」と決めてしまわず、肌に合う方法を模索してみてください。自分の覚え方が見つかればただの暗記も楽しくなってきます!